雪崩が起き通行止めとなった県道。いったんは解消されたものの、その後再び雪崩が発生し、通行止めとなった=10日午前11時40分ごろ、福島市土湯温泉町
福島市の山あいを通る県道で10日に発生した雪崩の取材に向かう途中、雪崩に遭遇した。今、命があることに感謝しながら、記録として書き残したい。
通行止めが解除され、同僚と雪崩が発生した現場に着いて写真を撮影し始めたのが午前11時36分。5分ほどたったころ、遠くで叫ぶ声が聞こえた。
「雪崩だ!」。坂道の下の方から、こちらに向かって走ってくる別の報道機関の記者が見えた。山の上部を見上げると、雪が爆発したように舞い、地鳴りのような音が響いていた。慌てて車まで走り、乗り込もうかと思ったが、再び視線を上げると、明らかに雪が近づいているのが分かった。「間に合わない」と判断し、坂道を駆け上がり始めた。
数秒もしないうちに視界は真っ白になり、風に体が押し出されるのを感じた。何も見えず「死ぬのか」という思いが頭をよぎる中、ひたすら走った。次第にテレビ局のカメラマンの背中が見え始め「助かったかもしれない」と少し安堵(あんど)した。
雪煙が落ち着くと、髪にこびり付いた、分厚い雪をかき落としながら、道を少し戻った。「大丈夫ですか」「自分は無事です」。大声を上げて雪崩の向こう側にいる同僚らに伝えた。乗り込もうとしていた車は元にあった位置から雪崩に大きく押し出されて雪に埋まり、屋根が少し見える程度だった。「車に乗っていたら」「少しでも立ち止まっていたら」。テレビ局の車に乗せてもらって現場を離れたが、1時間以上たっても、手の震えが止まらなかった。孤立したホテルで過ごす今も、雪崩によって変わり果てた風景は頭に焼き付いて離れない。(報道部・国井貴宏)
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